着物は暑い?着物を着るときはどうやって体温調節する?

公開日:2023/01/15   最終更新日:2022/11/21

日本の着物は長袖で、裾は足全体をすっぽり覆い、夏場に着るには難しい衣類です。真夏に着る浴衣は夏祭りや花火大会で大人気ですが、ほかの場、たとえばフォーマルな席で身につけている人はほとんどいません。なぜでしょうか?ここでは浴衣と着物の違いを説明し、夏場の着物術をお伝えします。

浴衣はフォーマルではないので要注意!

浴衣は夏場に着る和服ですが、フォーマルシーンでは絶対に着用できない衣類です。訪問着、振袖などの着物は、格でいうと洋服のイブニングドレスにあたります。浴衣の格は、TシャツとGパンにあたり、気軽に着るラフなスタイルです。花火大会や夏祭りに着るには適していますが、結婚式や正式なパーティでは着られないもの、とご理解ください。

本来浴衣は湯帷子(ゆかたびら)と呼ばれ、入浴時に着る衣類でした。江戸時代に入ると、風呂上りの衣服、寝間着として庶民に普及します。どんなにおしゃれで豪華に見える柄であっても、浴衣の格は低いままです。有松絞りや竺仙などの高級浴衣においても同様といえるでしょう。浴衣は裏地のない単衣仕立てなので、真夏の夜でも涼しく着られます。反対にスタンダードな着物を夏場に着ると、暑くてとても苦痛な外出になってしまいますよね。

夏場にフォーマルな席に出席しなければならないときは、どんな着物を着ればよいでしょうか?夏は単衣仕立てで絽や紗といった着物を着ますが、それでも完全に暑さを克服することはできません。夏場のフォーマルシーンには少しでも着物を涼しく着られるよう、工夫が必要です。

フォーマルな場でも着物を快適に着る方法

夏着物の代表格として、絽と紗の着物がありますが、フォーマルシーンで着用となると着る機会が極端に減ります。したがって、絽や紗の訪問着、振袖を誂える人はごくごく少数となりました。いずれにしても着物の外出は、真夏の暑さはとくに厳しいものがあります。着付けの際は熱がこもらないように普段以上に冷房を効かせておきましょう。以下にフォーマルな場でも着物を快適に着る方法を4点紹介します。

絽と紗

絽は糸をねじって織る夏着物の代表です。糸が少なく、隙間があるので通気性が高い着物となります。透け感があり、見た目にも涼しい印象を受けるのが特徴です。紗は絽の原形にあたり、こちらも少ない糸で織られています。

天然素材で

夏場の着物には天然素材のものを選びましょう。絹、麻などの天然素材はポリエステルに代表される合成繊維よりも涼しく、快適に着られます。ポリエステルは着物の内側に熱がこもり、大変苦しい思いをするばかりか、真夏には暑さのため健康を損なう恐れもあるので注意が必要です。

下着を工夫する

夏用の長襦袢、肌襦袢、裾よけを用意しましょう。浴衣セットに入っている肌着を使うのもよい方法です。浴衣用の肌着で肌襦袢、裾よけを省略できるうえ、絽や紗の長襦袢よりも、涼しく着られます。袖がなく、肌着と長襦袢が一体になったうそつき襦袢や衿付きのTシャツタイプの肌着もおすすめです。

小物を工夫する

着付け小物は少しでも涼しくなるものを使ってください。紐の1本でも涼感のあるものとないものでは大きな違いがあります。帯板は夏用のもの、隙間があり通気性のよい物を使いましょう。浴衣の帯板を使ってもよいですね。半襟は絽、帯締め・帯あげは必ず夏用の物を使ってください。へちまの帯枕はとても涼感がありますが、軽く安定性がよくないので、少し高度な着付けテクニックが必要となるようです。

涼感アイテムを合わせて対策しよう

着物を着たあとも涼しくなる工夫をしましょう。明治時代、東京8月の平均気温は26度です。現代はおおむね28度なので、着物を着るときは昔以上に暑さ対策をとる必要があります。

日傘

日傘は真夏の着物姿には必須アイテムです。遮熱効果が高く、日焼け、熱中症を防ぐ意味でも携帯しましょう。和柄にこだわるよりも、遮熱性の高いものを選んでください。

保冷剤

帯の下に小さめの保冷剤を入れておくと、長く涼感を得られます。フォーマルシーンで袋帯を二重太鼓に結ぶと、耐えがたい暑さになるのです。お太鼓の背側に入れたり、帯下のお腹部分に入れたりして、保冷剤を活用してください。着物に水分は厳禁です。ハンカチやミニタオルに包んで保冷剤の結露を吸収させます。

扇子

意外に侮れない涼感アイテムです。暑さで蒸れた首元や顔に風を送ります。一度あおぐと気持ちよくて、手放せなくなりますよ。おすすめしたいのが、雪輪柄の扇子ですね。雪輪は冬の柄と思われがちですが、見た目の涼しさを演出するために、夏でも用いられる柄です。涼し気な柄を描いた扇子は周囲の人にも、気持ちの涼感を届けてくれます。どんなに暑くても、衿を手で広げてバタバタと扇子をあおぐのはみっともない動作のため、控えましょう。

タオル

たもとやバッグの中にタオルをしのばせておき、汗をかいたときに取り出して使いましょう。たもとに入れておくのは汗用、バッグに入れておくは手拭きそのほか、と分けておくと衛生的です。

まとめ

夏場に着物を着るととても暑く、苦しい思いをします。浴衣は真夏でも涼しく着られる着物ですが、格が低く、フォーマルシーンでは着られません。夏に着物を着るには、素材を選ぶ、肌着を一部省略する、などの工夫が必要です。夏用の小物も充分活用しましょう。外出時は日傘、保冷剤、扇子などの涼感アイテムで対策をとります。タオルは忘れずに持ち歩いてください。

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