着物を着るなら知っておきたい!“博多織”の魅力とは
着物の素材として、さまざまな織物があることはご存知でしょうか。これまであまり着物に縁がなかった人なら“○○織”といわれてもピンとこないかもしれません。今回ご紹介するのは“博多織”、名前を知らなくてもこの織物の用途をヒントにすると「あっ、これか!」となるかもしれません。博多織の魅力について詳しくご紹介します。
博多織の長い歴史
博多織は日本の伝統的工芸品のひとつ、九州の福岡県と佐賀県で生産されています。しっかりとした生地でとても丈夫であることから、着物ではなく帯として使われることが多いです。
博多織の歴史ですが、いつ始まったのかは明らかではないということです。しかし博多織が誕生するきっかけとなった人物については、博多の商人“満田彌三右衛門(みつたやざえもん)”だと伝えられています。
時代は鎌倉時代の中期、満田さんは宋に渡り織物づくりを学びました。帰国後、その知識をもとに織物づくりを始めることになり、これが博多織誕生のきっかけだといわれています。
正確には、満田さんがつくった織物は現在の博多織ではありません。満田さんの子孫がさらに明で織物の技術を学び、日本に帰国してから研究と改良を重ねたものが覇家台(はかた)織、これをさらに改良したものが、現在の博多織の源流だとされています。
幕府の献上品になった博多織
1600年に徳川幕府の献上品に博多織が選ばれました。博多織は帯地に適していたことで献上品に選ばれましたが、献上を機に博多織の格が上がり人気の織物になっていったのです。その後、歌舞伎役者に宣伝を依頼したことで博多織は江戸で大流行となり、さらに全国へと博多織が知られるようになりました。
博多織の特徴とメリット
博多織は絹織物、工程数が多く手間がかかるのが特徴で、完成するまでが数か月から半年ほどかかります。帯地として人気の博多織は、多くの経糸(たていと)に数本の糸をまとめて太くした緯糸(よこいと)を強く打ち込んでつくるため、丈夫でコシのある生地になります。
経糸は一般的な織物の場合、2,000~3,000本程度ですが、博多織は7,000~1万5,000本もの糸を使用しているというので、生地がしっかりしているのも納得です。
博多織のメリットについて
生地にハリがある博多織を帯にすることで、締めやすいだけでなく着用中に緩みにくいというのが、もっとも知られているメリットです。丈夫でしなやか、美しさにも目を見張ります。このような特徴から、力士も博多帯を愛用しており、十両以上の力士では博多帯を身につけることが定番となっています。
また、博多織の柄としてもっとも知られている献上柄は、無病息災・家内安全などの意味が込められているもので、博多織の品物はギフトとしても人気です。
バッグや財布などにも応用されている
帯地として用いるだけでなく、今はバッグや財布などさまざまな商品の素材として博多織は使用されています。博多織の柄でもっとも知られているのが伝統的な献上柄ですが、それ以外にもさまざまな柄がつくられています。
博多織の献上柄とは?
独特な柄である献上柄は独鈷や華皿をモチーフにしています。独鈷(どっこ)とは、密教で使用する法具の一種で煩悩を砕くというアイテムです。華皿は仏様を供養するための花を入れる器で、独鈷と華皿はどちらも厄除け、家内安全といった願いが込められています。博多織には5つの色が使われていますが、これらの色にはそれぞれに意味があります。
・青は平和、安泰、慈悲
・赤は幸福、謙虚、挑戦
・黄は希望、信頼、富財
・紫は長寿、先見、品格
・紺は知識、鎮静、集中
これらの5色は、陰陽五行説と結びつけたもので、儒教の五常にも対応しています。青は仁、赤は礼、黄は信、紫は徳、紺は智と、このように献上柄の色には深い意味が込められていました。
明治時代には帯以外の商品も誕生
帯地として人気だった博多織ですが、明治時代になりジャガード機という織り機が導入されたことで、生産量が増えたため帯以外の商品もつくられるようになりました。
チョッキやネクタイのほか、カーテン地としても人気だったようです。また、以前は博多織の帯といえば男性用が多かったのですが、この頃から女性用の博多織の帯の売り上げが増加していきました。
こんなものにも博多織を使用
バッグには伝統的な柄ではなく、黒地や白地に金糸を合わせるなどシックなデザインのものがあります。シンプルな柄の博多織なら、和装・洋装どちらにも合わせられる上品なバッグに仕上がります。献上柄が粋で上品なネクタイも人気、博多織とレザーを使用した名刺入れなどもありました。
扇子といえば使用されるのは紙が一般的ですが、紙の代わりに博多織を使用した商品もあります。ほかにも、ブックカバーやストラップ、タンブラーなどさまざまな商品に博多織は使われています。
まとめ
博多織は、着物の反物ではなく帯地として人気の織物です。博多織の帯は朝締めれば夕方まで緩まない帯として知られており、しなやかで丈夫、そして美しさも魅力です。伝統的な献上柄には深い意味があり、贈り物にすることで想いを伝えることもできるでしょう。
近年は帯だけでなく、さまざまな商品に博多織が使われています。柄もいろいろ選べるため、帯はもちろん、バッグや小物などでも博多織を楽しんでみてください。